データサイエンスをビジネスに活かすには?3つの条件と8の事例を紹介


データサイエンスは、データを収集・蓄積・分析して、ビジネスにおける意思決定を支援し、業務の効率化・高度化、および競争力強化等を実現する手段として大変有効であり、注目を集めています。

この記事では、データサイエンスの特徴や必要性、ビジネスに活用する条件やデータサイエンスを扱う職種について解説します。データサイエンスの活用事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
 

目次

 

 

データサイエンスとは?

そもそも、データサイエンスとはいったい何なのでしょうか。いろいろな定義ができますが、本稿での定義は「データを起点に新しい価値を生む実学」とします。例えば、誰がどんな物を買っているのか、といったデータを軸にして現実の社会を分析することで、「この人はこんな商品も好きな可能性が高い」といった新しい視点が得られます。その視点に基づいて新しい販売戦略を立てれば売り上げが増える、つまり新しい価値が生まれると言えます。経験や勘に基づいて戦略を立てる場合に比べて、生産性も向上するかもしれません。体系だった理論を持つ「サイエンス」でありながら、ビジネスでも大いに役立つため、「実学」なのです。

データサイエンスではIT技術を利用し、データを収集・分析・解析して、データの新たな活用方法を発見します。この分野では、株価や気温などの数値データだけでなく、テキストデータ、音声、画像や動画データ等も分析の対象となります。
 

データサイエンスの必要性

企業の競争力を維持するためには、データの分析や活用が必要不可欠です。インターネットの普及とIoT(Internet of Things)により得られたセンサーデータの普及により、膨大な量のデータが集められるようになりました。この膨大なビッグデータを分析・解析するためには、AIと呼称される機械学習やディープラーニングといった技術が必要です。

これらの技術を扱うために求められるのがデータサイエンスです。データサイエンスで培われた知見をどうビジネスに活かすかが、企業の競争力を左右すると言っても過言ではないでしょう。
 

データサイエンスの応用分野

データサイエンスが活用できる分野は、IT企業だけではありません。データサイエンスは、さまざまな分野に応用できます。既に、マーケティングや製造現場の効率化、事業戦略などの分野で活用されています。

例えば、マーケティングでは顧客情報や購入履歴、Webサイトの閲覧履歴などを分析してニーズを把握したり、顧客毎の購入履歴からレコメンデーションを行って売上拡大を狙うことに用いられています。製造業では、機器などの故障を予兆したり、良品と不良品との識別、生産計画の立案などにデータサイエンスが用いられています。
 

データサイエンスの将来性

IT技術やAI・分析テクノロジーの進化により、現在では高度な状況判断や未来予測ができるようになっています。しかし、それらのすべてをAI・分析テクノロジーで行えるわけではありません。AIがいくら進化しても、AI・分析テクノロジーで何を解くか、それらをどのように活用するかは人が考えなくてはならない上に、技術的にも精度のチューニングやモデルのinputなどには、人が介在しなくてはらならないのです。

また、データサイエンスは注目が高まるとともに人材も不足している分野です。今後、企業がデータサイエンスを活用して、競争力を高めたり新たなビジネスを創造していくためには、人材の育成や発掘に加え、組織のあり方や人事評価制度の見直し等も必要となってくる場合があります。これからもデータサイエンスは、人とAI・分析テクノロジーが両輪となって発展を続けていくでしょう。

データサイエンスをビジネスに活かす3つの条件

データサイエンスをビジネスに活かすには、条件があります。ここでは、3つの条件を解説します。
 

人的リソースを確保している

データサイエンスを実施するには、優秀なデータサイエンティストの確保が重要です。優秀なデータサイエンティストとは、データサイエンティスト協会が定める「データサイエンス力」、「データエンジニアリング力」と「ビジネス力」の3つの能力を兼ね備えた人です。しかし、これら3つを兼ね備えた人材は少ないうえに、獲得競争が激しいため、確保が難しいのが現状です。
また、企業内でデータ活用を推進するには、事業マネジャーとデータサイエンティストが協働できる体制になっている必要があります。そのためには、事業マネージャ―はデータサイエンスで何ができるのかという基礎知識を習得し、一方でデータサイエンティストはビジネス上の業務知識や課題を理解していて、両者が共通の言語(土台)で会話できるようになっていることが必要です。
こうした人的リソースの確保や土台作りのために、社内で研修することもひとつの方法です。

 

「見つける力」「解く力」「使わせる力」が重要

データサイエンスを用いる上では、データ分析により課題を「解く力」に注目しがちです。しかし、課題を「解く力」だけではなく、課題を「見つける力」と分析結果を「使わせる力」も重要です。「見つける力」が十分になければ、実務上インパクトを与えない「分析のための分析」を行ってしまうことになります。また、分析結果の有効性を分かりやすく現場のビジネスサイドの側に説明して、効果を共有・共感させ、現場で実際に「使わせる力」がなければ、せっかくの分析結果も使われずに書類の中に埋もれてしまいます。こうしたことから、3つの力を兼ね備えたチーム作りを意識するようにしましょう。
※参考:大阪ガスにおけるデータ分析専門組織の運営法 ――「見つける力」「解く力」「使わせる力」を兼ね備えたフォワード型分析者集団を目指す | IBM ソリューション ブログ
 

データが分析を可能にする十分な量と質を満たしている

データ分析は、そもそもデータがなければ実施できません。しかし、データが存在する場合でも、データサイエンスで利用するには、分析に使えるだけの十分な量と質を満たすデータを収集・蓄積することが求められます。十分なデータ量がない場合には、分析結果の精度が良くなかったり、推定結果が不安定になってしまうので、注意が必要です。また、データの質という面では、大きく①データ項目が統一されていること、②分析に必要なデータが揃っていること、という2つの要件を満たしている必要があります。①については、企業によっては、営業部や情報システム部、マーケティング部などでシステムが異なる等の理由でデータが各所に分散していたり、同じ種類のデータ(例:購買データ)であっても、項目(例:性別、購入日、等)が部署間で揃っていないケースがあります。このような場合は、データ項目等を統一して整備するところから始める必要があります。次に②については、分析を進める上で必要(有効)なデータが揃っているかを確認する必要があるということです。もし必要なデータがないならば、データを収集する方法から検討をすることが必要になります。
 

PPDACサイクルを円滑にまわせる

データサイエンスの活用では、PPDACサイクルを円滑に回せることも重要です。
Problem (課題の特定):問題解決の為の課題の設定。課題クリアの基準となる「指標」を具体的な数値(KGI(業績目標指標)、等)として設定
Plan (プロジェクトの定義):「指標」を達成するための調査方法の計画
Data (データ収集):欠損データや異常値の有無をチェックし適切に処理・変数追加等
Analysis (分析):問題点や原因を究明。結果から、施策のためのヒントを探索
Conclusion (結果の導出):分析結果から改善点を見つけて施策を検討

Conclusion(結果の導出)が完了した段階で、当初の問題がどの程度改善したかに応じて、次の課題を設定し、新たなサイクルにつなげていきます。
分析する目的が明確になっていない、分析結果を基にした施策が立てられていない状態では、PPDACサイクルは回せません。また、上記のサイクルを関係者の間で共有されていることが必要です。

 

データサイエンスを専門的に扱う職種

ここでは、データサイエンスを専門的に扱う職種を紹介します。ただし、最近ではそれぞれの分野で求められるスキルの水準が高度化しているために、役割が細分化してきている傾向があります。
 

機械学習エンジニア

モデル構築やシステム設計、プログラミングといった開発に携わります。また、データセットやプロジェクトの進捗管理なども担います。
 

データアナリスト

データアナリストは分析だけではなく、解析したデータを基にして、具体的な戦略や解決方法を提案することもあります。
 

データエンジニア

データエンジニアとは、データの収集や管理をするためのシステム開発に携わる職種です。また、課題を見つけ出して、その解決方法にあったデータ環境を整える役割もあります。
 

データサイエンティスト

データサイエンティストとは、データサイエンスを活用し、企業に利益をもたらすエキスパートです。業務は、課題の洗い出しや目標の明確化、データの収集・加工・分析、分析結果をビジネスに活用して利益を生み出すなど多岐にわたります。

データサイエンティストには、プログラミングや統計学、数学といった数学的手法やIT技術だけでなく、ビジネスやマーケティングの深い理解も必要になります。

データサイエンス活用8の事例

データサイエンスを実際に活用して成功した企業の例を紹介します。
 

営業スタッフの効率化を実現した証券会社様

この証券会社では、幅広い商品を取り扱っており、顧客の好みや売買回数・金額、リスク許容度などが異なりました。そのため、顧客それぞれに合った商品を提案するには時間がかかり、スタッフの負担も大きいという課題がありました。

これを解決するために、過去の購買実績やサイトの閲覧実績などのデータを分析し、顧客と商品ごとの期待販売額のリストを作成しました。その結果、各顧客に期待販売額の高い商品を重点的にアプローチすることができるようになり、効率的な営業が実現しました。
 

採用工数の削減を実現したIT会社様

あるIT会社では、新入社員の採用時に採用工数の多さやリクルーター間での評価にバラつきがあり、基準を満たしていても不採用になったり、逆に基準を満たしていなくても採用になることが課題でした。

これを解決するために、過去の人事データを利用して分析を行いました。分析では、履歴書のテキストデータや適性検査データなどを基にして採用基準を明確化し、基準に対する適合率を算出しています。これにより採用工数が削減され、また評価のバラつきを小さくすることが可能となり、優秀な人材の早期発見にもつながっています。

検証作業の多大な時間とコスト削減を実現したゲーム会社様

こちらのゲーム会社では、バグの発見やゲームバランスを確認するためのテストプレイに、多くの時間とコストがかかることが課題でした。

そこで、AIを使ったシステムを構築してテストプレイを自動化、プレイデータを基にした学習をさせることで、ゲームバランスの網羅性を高めました。複数のステージやキャラクターがいるようなゲームでも、大量のゲームバランスが検証できるようになり、テスト精度の向上、および時間やコストの削減を実現しています。
 

営業活動の効率化を実現した精密機器メーカー様

ある精密機器メーカーでは、営業活動の効率向上が課題でした。

この課題を解決するために、利用者の詳細や利用時間・頻度などのデータを用いて分析を実施しました。これにより、顧客の利用状況を可視化して把握できるようにしただけでなく、故障予知も行えるようになりました。適切なタイミングでのメンテナンス等が行えるようになり、加えて利用状況にあわせたアップセルやクロスセルの提案ができるようになったため、営業活動の効率化が実現しました。
 

総エネルギーコストの約20~40%削減を実現したITサービス業様

ITサービスを提供しているある企業では、HEMS機器の制御を最適化して、エネルギー効率を向上させたいという課題がありました。

そこで、住宅で使用されるエネルギーの消費パターンや、電気自動車の走行予約データ、温度や湿度、気象データなどを用いて分析を行いました。これにより、時間帯ごとのエネルギー消費量や太陽光発電の電力供給量、電気自動車の使用電力量の予測し、HEMS機器の制御を最適化することによって、総エネルギーコストを約20~40%削減できるようになりました。
 

高精度な勤務シフト作成の自動化を実現した小売業者様

ある小売業者では、勤務シフトを作成する際に、ヒアリングや個別のカスタマイズなどを行っており、多くの時間とコストがかかることが課題でした。

同社は、会社の労働基準や社員のスキル、勤務日の間隔、休日の取得日数などのデータを基にして、最適化の技術と組み合わせて、余剰人員を最小化する最適な勤務シフトを作成するシステムを導入しました。これにより、高精度な勤務シフトの作成が自動で行えるようになり、時間やコストの削減を実現しています。
 

ドライバー1人あたり年間数万円程度のコスト削減を実現したタクシー事業者様

そこで、各ドライバーの車両走行のログデータや、日報データの分析して、燃費が良い・悪い運転パターンを把握して、スコアリングを行いました。そのスコアリングを使って、燃費を改善できる余地のあるドライバーを予測し、該当者に対して運転の改善カウンセリングを行うことができるようになりました。

こうした取り組みにより、ドライバー1人あたり年間で約数万円ものコスト削減を実現しています。
 

大幅なコスト削減を実現した物流サービス事業者様

ある物流サービス事業者では、配車にさまざまな制約があり、担当者の経験や勘などによって配車計画(ルートや配車台数)を立案していました。そのため、配車計画が最適化されていないため、無駄なコストを発生させていることが課題でした。

同社は、積載量や顧客・商品の傾向といった業務データや制約条件を基にして、最適化計算を行うモデルを導入しました。これまで属人的に行っていた配車計画を自動的にかつスピーディーに算出できるようになりました。最適な配車計画によって大幅にコストが削減されるだけでなく、担当者の業務負担の軽減、属人的な業務の排除も実現しています。

データサイエンスはビジネスの成長に不可欠

データサイエンスは、さまざまな業種に活用できるだけでなく、企業の競争力を高め、ビジネスを成長させるためにも不可欠です。しかし、データサイエンスを実施できる人材は限られており、獲得競争が激しいため、人材確保も難しいことから、社内での育成も重要な選択肢と考えられます。

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